母子登校の解決法
母子登校とは
私たちペアレンツキャンプには、不登校や五月雨登校の他にも母子登校(母子同伴登校)のご相談が寄せられています。母子登校とは、母親が一緒にいないと学校まで行くことができない、給食を食べられない、教室に入ることができない、授業が受けられない状態のことを言います。
不登校に比べると、家に引きこもっているわけでもないし学校にも母親が一緒であれば行くことができているのだからという理由で社会的にもあまり問題視されていない傾向があります。「子どもの成長と共に母子登校は自然と解決するから今のまま母親は学校まで付き添ってください」というアドバイスを学校やカウンセラーからされるケースもあります。
しかしながら、母子登校のお子さんのことで悩まれている親御さんにとっては、単純に「不登校の子よりかは楽でよかったわ」とは考えられません。母子登校と言っても、ケースはさまざまです。校門まで一緒に登校するというケースもあれば、教室まで一緒に登校、もしくはお母さんがいないと不安だという子どもだと教室までお母さんに入ってもらい授業中も付きっきりなんていうこともあります。
母親にかかる精神的、肉体的負担のことを考えると、母子登校状態は不登校状態と比べても悩みは決して少なくはありません。このような母子登校の特徴としては、お母さんの負担がとても大きく、頑張るお母さんが疲れてしまいやすい傾向にあります。
お母さんによってはお仕事をされている方もいらっしゃいます。母子登校のケースでは、朝から子どもに付き添って学校まで行かなければならないため、職場にご迷惑をかけることもあります。主婦の方も決して暇ではありません。毎日、給食の時間だけ学校へ行き、子ども用の机とイスに座って心からの笑顔で給食を食べられるお母さんが果たしているでしょうか。「子どものことを考えれば、これくらいの労力は仕方ない。私が付き添ったら子どもは学校には行けるんです。」とおっしゃる方もいます。
授業参観などで我が子の学校での様子を見ることは親にとって幸せな瞬間だと思います。しかし、毎日ひとりだけ教室の後ろに立って自分の子の授業風景を眺める親の気持ちを考えると胸が痛みます。
母子登校の持つ問題
私たちのような支援者の視点で考えても、不登校より母子登校の方が問題は浅いとは言い切れません。
場合によっては不登校のケースよりも母子登校のほうが長引くケースもありましたし、カウンセラーの対応としても高度な教育的判断が求められることも多々ありました。母子登校になった子どもの予兆としては、朝行き渋りを見せます。
始めはお母さんも叱ったりなだめたりしながらなんとか登校させるのですが、どこかのタイミングでお母さんも「これは一緒に行ってあげないとどうしようもないな」と判断される時が来ます。
例えば、子どもが学校に行けないことを「お母さんが一緒に来てくれないせいで行けないんだ!」とお母さんのせいにする、もしくは「お母さんが一緒だったら行くよ!」と付き添うことによっての登校の意志が見えたり、近所迷惑になるくらい「一人だと行けない!」と大声で泣かれたり…。このような場合についていこうと決められるお母さんが多いです。
家庭内対応においても、学校へ母親と一緒でなければいけない子は何事にも母親を頼ってきます。トイレに行く時も、お風呂に入る時も……お留守番を頼もうものなら、裸足で家の外まで出てきて、泣きながらお母さんを追いかけてきます。お母さんの生活は常に子ども中心に回るようになります。
そこに親としての自分は感じられても、妻としての自分、ひとりの人間としての自分を感じられずに夫婦関係に亀裂が生じたり、ご自身の精神的な安定を崩される方も少なくはありません。そして子育ての自信をどんどん失ってしまうお母さんも少なくありません。「ほかの子はひとりで学校に行って楽しんでいるのに、なぜウチの子だけが……私の育て方が悪かったのかも」と。
これが幼稚園や保育園の子であれば「あら、まぁ」で済むのかもしれません。しかし、小学校2年生、3年生、4年生になってもこの状態が続くと親の不安は子どもの将来にまで向けられます。これは無理のないことです。
母子登校の学校側の解決策は不登校と同じくいまだ明確なものがありません。自然と子どもの自立心が芽生えて羞恥心が年相応に育ってくると母子登校は解決します。しかし、そうは言われても母親の立場からすれば……「そのゴールはいつなの?私はいつまで頑張ればいいの?」という悲痛な叫びが聞こえてきます。
母子登校に関して一番の解決法は「過度にお母さんを頼る傾向」をいかに改善して、年相応の自立心を育んでいくかということがポイントに挙げられます。
この母子関係の根本にあるものが親の過干渉や過保護なのか、それとも弟や妹のように幼く愛されたいという気持ちからなのか、お子さんの発達に課題があるのか、環境に起因する問題が有るのかを分析する必要があります。
解決方法
親の過干渉や過保護が根本にあるケースでは、子どもの自立心を育む対応(自分で考えさせる問いかけや、親の干渉を控えるなど)をしていくことが大切です。
弟や妹のように幼く愛されたいと思っているケースでは一時的に愛情を満たしてあげる対応や、親の気持ちを伝える手法(アイメッセージ)が効果的です。
具体的に母子登校を乗り越えるためには、段階的な手法が効果的です。今の段階で教室ま
でついていかないと登校できないのであれば、次は廊下まで。その次は下駄箱まで、次は校門まで……というように目標設定を明確にして徐々にひとりで登校できるように促すことが大切です。
その際には親子共に目標達成をしていく喜びを分かち合えるように「登校カレンダー」を作ったり、仮の報酬を与える「トークン・エコノミー法」などを用いると効果的です。
ただ、注意しなくてはならないことは、段階的な手法には少なからず「停滞期」があるということです。下駄箱のところまではあっさり進めることができたけれど、そこから先がクリアできないというようなケースもあります。その時に子どもの背中を押してやり、気づけをするべきなのか、または停滞を受け入れて考えさせる時間を与えるべきなのかが重要な判断となります。その判断は個々の親子関係や子どもの性格傾向によるので専門家の判断を受けることが大切ではないかと考えられています。
ペアレンツキャンプでの取り組み
ペアレンツキャンプでは専門のカウンセラーが担当となって、どのような段階設定をするのかということを個々のケースごとに考えながら支援をしています。
親が子離れすれば、自然と子どもも親離れしていきます。
あなたのお子さんにとってどのラインが過保護・過干渉なのかを分析していき、子どもが自分の足でみんなと同じように母親から自立して学校へ行けるようにするために一緒に頑張っていきましょう。
お悩みの方は、まずご相談フォームよりご相談ください
不登校のケースであれば、どの程度欠席が続いているのか、不登校に至るまでの流れなどをお書きください。 五月雨登校や母子登校のケースではその頻度をお書きください。