近年、ペアレンツキャンプのお問い合わせでは小学校低学年のお子さんが嘔吐を目撃してしまい、そこから学校に行きづらくなったというご相談が多くなっています。
コロナ禍もあったので、嘔吐などの体調不良に関して敏感にならざるを得ない状況が続いたかと思います。
その結果、大人だけでなく子どもたちにも影響が出ているようにも感じます。

目次

小学校低学年ではよくある話

小学校低学年ぐらいのお子さんは、まだ自分の体調管理が出来ない部分も多いものです。
ちょっとフラッとする、気分が悪いと感じてはいても「大丈夫だろう」と思い誰にも相談しなかったら、体調がどんどん悪くなって吐いてしまうこともあったりします。

小学校の先生では、特に低学年のクラスを担当されている先生方は生徒が嘔吐してしまうことはよくあるようで、冷静に対処される方が多い印象を受けます。

ただ、子ども達からすると日常生活で嘔吐するなんてことはそうありませんし、自身も嘔吐した経験があるとその辛さやしんどさをよく覚えているものですので、大人が捉えている以上に衝撃を受けてしまうことも珍しくありません

自分が嘔吐したわけでもないけれど、誰かが嘔吐している様子を見て不安になってしまうという子も多いのです。

そういった不安を家に帰って寝る前に言い出す子もいれば、登校する直前に

学校行けない・・・。

と言い出してしまう流れになることもあります。

親としては自分が今体調が悪くて嘔吐しているわけでもないんだから、気にしなければいいのにと思ってしまう方も多いですが、子どもはそうもいかないことが多いのです。

子どもが感じている不安を「大したことない」と決めつけない

大人である私たちは、クラスメイトが嘔吐したとしても自分も同じように嘔吐してしまうと受け取ることは少ないかと思います。
それは、これまでの経験上「そうならない可能性の方が高い」ということを知っているわけです。

しかし、子どもはそういう思考の流れにはなり難く、
「自分もあの子のように嘔吐してしまうんじゃないか」
「気持ち悪くなってきた・・・」

などと嘔吐した子に引っ張られるような受け取り方をする子の方が多いでしょう。

親御さんも初めは「大丈夫よ。」などと冷静に対応出来ていたとしても、子どもから訴えてくる頻度が1日に何度もとなるとうんざりしてしまい、冷静に対応が出来ないことも出てきます。
そういった時に「そんなの大したことないんだから、気にしなければいいじゃない。」といった言葉を子どもに向けてしまうこともあるようです。

こう言いたくなるお気持ちも分かりますが、子ども側も冗談で言っているわけではなく本気で不安に感じていることもあります。
上記のような声掛けで「そっか。」などと割り切ることが出来る子であれば問題ないのですが、そうでない子の方が近年多いようにも感じます。

子どもが必死に「不安だ」と受け止めても親が「大したことない」と一瞥してしまうという状態では、子どもが親に対して不信感を抱くようにもなるでしょう。
また、このような親御さんの対応が増えてしまうと、子どもは「親に話しても仕方ない」と受け取るようになり、どんどん話をしてこないということも考えられます。

子どもの気持ちに共感してあげる

上記にも書いたように、子どもと大人とでは受け取り方に大きな差が出てきます。
その要因の1つに経験値が違うからというのはあるでしょう。
子どもが不安でいっぱいになっている状態であれば「大丈夫だよ。」と落ち着かせる対応も必要になってきますが、そうでない場合はむやみに「大丈夫、大丈夫。」などと言い過ぎるの考えものです。
そう言われた子どもたちは“自分のことを全くわかってくれない”と受け取る可能性があるからです。

まずは、親御さんに話をしてきた子どもの気持ちに対して共感的に話を聴いてあげることが肝要でしょう。
親御さんが自分の話を受け止めてくれた、ちゃんと聞いてくれたというだけで子どもは安心するものです。
また、親御さんに気持ちを受け止めてもらい、聞いてもらうだけで子ども側の気持ちが整理されるということもあります。
(このことを心理学ではオートクライン効果とも言います。)

不安なことだけでなく楽しいことにも目を向ける

人間の記憶は、感情と結びついたものは残りやすいと言われており、特にネガティブな感情ほど忘れにくいということが分かってきています。
記憶力のいい子や不安なことに対して敏感に反応してしまう子は、ネガティブな感情ばかりに目が向いてしまうということは多いものです。

夜寝る前に不安を口にするという子も多く、一度ネガティブな感情を話し始めると泣き出してしまい、親御さんも困り果ててしまうということもあったりします

我が子が不安を口にして泣いている姿を見るのは親であれば辛いでしょう。
しっかり不安な気持ちを吐き出すことも大事ですが、ネガティブな感情にばかり目が向きやすいお子さであれば、親御さんから楽しいことをイメージさせるような手助けがあってもよいかと思われます。

楽しいことをイメージして話すうちに気が付いたら寝てしまった、またはネガティブな発言がそれ以上出なくなれば親御さんも安心ですよね。
最初は親御さんのサポートが無いと楽しいことをイメージするという流れが出来ないことも多いかと思いますが、何度か繰り返すことにより、親御さんが居ない場所でも「そういえば不安になった時にお母さんと一緒に楽しいことを思い出したよな。」などと一人でも出来るようになったりすることもあります。
親御さんを通じて不安との向き合い方などを練習していけるといいですよね

不安だったけど行けた!が大事

また、不安になるということ自体が悪いと受け取る親御さんも少なくありません。
「こんなに不安に感じるウチの子は何か病気なんじゃないかしら?」なんて思われる方もいらっしゃるでしょう。
もし、親御さんとして不安に感じられるようであれば専門機関に行って受診することも可能かと思います。

しかし、誰しも不安なことや苦手なことはあるもので、不安を言うこと自体が悪いとは思いません。
そこよりもむしろ、その後どうするかが大事なのではないかと考えます。

人間の本能として危険を感じた場合に逃げる選択肢を取ることは当たり前とも言えます。
それと同様に不安や恐怖がある場合に、その出来事から目を背ける、または逃げる選択をすることも可能でしょう。
ですが、社会で生きていく上では逃げてばかりが出来ないこともあります。

不安や恐怖を感じたとしても、行ってみて・やってみて「出来た!」や「問題なかった!」という経験を積み重ねていくことで、子ども達も少しずつ捉え方が変わってくるのではないかと思います。
1回の成功体験でガラリと受け取り方が変わってくれるといいのですが、なかなかそうもいきません。

「やってみたら大したことなかった」
「私(僕)、出来たよ!」
などと経験できると子どもの自信にも繋がっていくでしょうね。

親としては子ども達にそういった経験をさせてあげられると安心かもしれません。

とは言え、不安を訴えてい来る子ども達のパワーは凄まじいこともあり、親御さんが疲弊してしまうという場合もあります。
疲弊してしまうと冷静に判断できないことも多いかと思いますので、うちの子にはどういった対応が良いのだろうかと迷われる方は当センターなどの専門機関にご相談してみてくださいね